平成18年11月22日
八八式7.5糎野戦高射砲
折畳おりたたみ式の砲床と車輪を持つ移動式の高射砲で、陸軍の野戦防空の主力火器として活躍した。
この高射砲は東部ニューギニアのウエワクで野戦防空に活躍した火砲である。
東部ニューギニアでは糧食りょうしょく、弾薬の補給が杜絶とぜつした中、困苦と病魔を克服して最後まで戦闘を継続した、戦史上に稀まれに見る難戦なんせんであった。
昭和46(1971)年1月、全戦争受難者慰霊協会が実施した遺骨収集において現地政府の許可を得て持ち帰り、昭和47(1972)年8月、同協会から靖國神社に奉納された。
口径 75mm
砲身長 321.2cm
初速 720m/秒
重量 2,450s
最大射程 13,800m
最大射高 9,100m
(説明板より)
(説明板の写真より)
八八式7.5センチ野戦高射砲 (東京・靖国神社遊就館) (平成18年11月22日) |
【八八式7センチ野戦高射砲】
大正14年8月、設計完了。
大正15年4月、陸軍造兵廠で試製砲完成。
昭和3年に八八式高射照準具とともに制定。
本砲の移動は、最初は4輪自動貨車を使用していたが、後に6輪自動貨車を使用。
このため速度が増大したので、車軸、車輪、緩衝装置を改修した。
昭和10年までに空気入ゴム輪帯車輪などが採用され、運動性が向上した。
本砲の駐退復座機は水気圧変後座式という優れたものであったが、駐退機の構造があまりにデリケートで、射撃中しばしば故障を起こし、指揮官や兵士を泣かせた。
そのため、昭和9年に、制定時には分解制限品だった駐退復座機を、使用部隊で分解・手入れ・調整が出来るよう、器具を新設し制定した。
最大発射速度は1分間に15発。
1発は3秒で発射できるよう訓練されており、熟練した分隊なら20発も可能だった。
脚は5本あるが、移動に際しては前方と後方に分けて閉じ、前方を牽引車に直結する。
放列布置では5本の脚を法線状に開いて、砲床を形成する。
放列布置ならびに撤去に要する時間は約5分。
射撃は砲車長以下12名で行なう。
弾薬補充は11番砲手が、他に照準、信管測合、装填、拉縄などを分担した。
実戦になれば欠員が生じるままに、最低4名いれば射撃は可能だった。
本砲は、船舶高射砲としても利用された。
輸送船の船首または船尾に1隻当たり2〜6門が装備された。
製造数は約2000門以上。
(佐山二郎著 『大砲入門』 光人NF文庫 1999年発行)
(平成24年3月26日追記)
【八八式7.5センチ高射砲】
日本陸軍の8割をも占める主力高射砲。
人力でハンドルを回して狙いを定めるのだが、照準手は指示盤の指針にピッタリ合わせるよう自分のハンドルを回せばよい。
こうすれば砲口が飛行機の未来位置に向く仕組みで、ちょうど海軍の射撃指示装置と同じ方式である。
砲側を離れた観測班が別の位置で敵機の方向や速度、高さなどを計算して数値を電気的に誘導するのである。
その際、三角関数や微積分、連立方程式などの高等数学が応用される。
これらの照準装置のおかげで、八八式は極めて優秀な砲として、実戦部隊で大いに期待された。
だが、第二次世界大戦中には、飛行機の高速化により、発射後、弾丸が目標付近に到達するまでに20秒余もかかってしまい、この間に敵機は6000メートル近くも移動しているのだから、次第に威力を失ってきた。
この砲は指揮の分隊長を含め1門あたり13人で撃つ。
八八式野戦高射砲を曳くのには「いすゞ自動車」が昭和11年以降に作った九六式6輪牽引車が使用された。
これは車輪の6個ついた大型トラックである。
もちろん、この九六式6輪牽引車には、砲員13名が乗る。
このほか弾薬用トラックとして、ニッサンあるいはトヨタの普通のトラックが1台づつつけられた。
この高射砲は7000メートルまでの敵機を撃つことができる。
砲弾のスピードは野砲の1.5倍もあった。
高射砲1個連隊の編成は、ほぼ次のような編成であった。
高射砲1個連隊・約1800名・18門
第1大隊:八八式7.5センチ高射砲 9門
3個中隊で編成(1個中隊=3門)
1門あたりの弾薬数は950発を用意
第2大隊:第1大隊と同じ
第3大隊:九三式探照灯 18台、九五式聴音機 18台
3個中隊で編成(1個中隊=各6台)
太平洋戦争の初期の昭和16年、17年の八八式7.5センチ高射砲の生産数は1ヵ月に46門というわずかなものだった。
ところが、昭和17年4月18日、米空母ホーネットより発進した米陸軍のB25双発爆撃機による東京初空襲があると、軍部は慌ててその生産にピッチをかけた。
そして年産を550門から一挙に2倍近い1053門に増加したのである。
この高射砲は1万トン級の陸軍の特殊上陸母艦「饒津にぎつ丸」「あきつ丸」「熊野丸」「摂津丸」などにも装備された。
(参考:木俣滋郎 著 『陸軍兵器発達史』 光人社NF文庫 1999年発行)
(平成29年2月15日 追記)
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