九七式車載重機関銃


 平成24年4月28日

フィリピン共和国ルソン島・クラーク博物館

九七式車載重機関銃(左側の銃) 九七式車載重機関銃(右側の銃)

【九七式車載重機関銃】

この銃は九二式重機関銃の車載用改良型で、保弾板にかわって20発入りの箱型弾倉をもつ。
地上用の11年式軽機関銃を車載用に転用した九一式車載機関銃にかわって、昭和12年に制式化された。
その基本となったのは、当時世界的に優秀であると定評のあるチェコスロバキアのブルーノ国営兵器廠で設計されたZB26軽機関銃であった。
14年式自動拳銃によく似たピストル型銃把と高低調節式の直銃床肩当てをもち、車内に搭載している脚を付ければ地上での戦闘射撃も可能である。
弾倉はZB26と同じ20発入りの直箱型。
有効射程距離は540メートルで、やや短い。
銃身左側に照準眼鏡、さらに車体外部に露出する銃身の保護のための防弾器を備えている。
照準器としては照星、照門の直視式のほかに、1.5倍、射角30度の望遠式照準眼鏡をもち、接眼部にはゴム製のクッションが付けられている。
本銃は、7.7ミリ九二式実包を使用するところから「重機関銃」と称された。
九五式軽戦車九七式中戦車に2挺ずつ、九四式軽装甲車や特二式内火艇(水陸両用戦車)にも1挺ずつ積まれている。
保有弾数は、一番少ない九五式軽戦車が1挺当たり1500発、九四式軽装甲車が1980発、九七式中戦車が約2000発である。
性能は九二式重機関銃と同等で、以後、各戦車に搭載され、終戦まで最も代表的な車載火器となった。
生産費については、車載用のカバーが付いているためか、九七式は口径6.5ミリの九六式軽機関銃の1.8倍もした。

(要目)
口径 7.7ミリ
作動方式 ガス利用
全長 114・5センチ
銃身長 70センチ
重量 12.4キログラム
発射速度 450発/分(500発/分の説あり)
給弾方式 箱型弾倉20発

(参考:月刊雑誌『丸』別冊 『日本兵器総集(昭和16年~20年版)』 昭和52年発行)
(参考:『日本陸軍兵器集』 KKワールドフォトプレス 昭和57年発行)
(参考:木俣滋郎 著 『陸軍兵器発達史』 光人社NF文庫 1999年発行)


【九七式車載重機関銃】

車載機関銃の第1号は試製戦車の審査に伴い、これに搭載する回転弾倉式機関銃を試製し、昭和3年(1928年)6月に竣工試験を行ったが、完成には至らなかった。
次の車載重機関銃の開発は昭和6年7月に始まった。
研究方針は、九一式車載軽機関銃の弾丸威力が小さく、取り扱いが不便で故障が多いため、これらの問題を解決する特種の7.7mm重機関銃について研究するというものであった。
昭和9年(1934年)3月に第1次試作品1挺が完成。
この銃は3年式機関銃を改修し、保弾帯式にしたもの。
昭和9年11月に第1次試作品に修正を施した第2次試作品2挺が完成。
これを陸軍騎兵学校と戦車第2連隊に実用試験を依託した結果、より軽量で車体に合うものを新製する必要があるということになった。
この後、第3次試作品が2種類作られた。
試製B号軽機関銃を車載用に改修したもの(試製甲号)と八九式旋回機関銃を車載用に改修したもの(試製乙号)で、昭和11月1月に完成した2種を試験した結果、甲号の様式を採用することに決まった。
引き続き戦車第2連隊で実用試験を行った結果を受けて、昭和12年7月に第4次試作品が完成した。
この銃は命中精度と耐久性の面では概ね良好だったが、弾倉の機能に問題があった。
そこで当時完成していた無起縁実包を使って機能試験を実施したところ、今度は極めて良好な機能を示し、故障は全く発生しなかった。
これにより本銃に使用する実包は九二式重機関銃に使用する半起縁式九二式普通実包を無起縁としたものに替えることになった。
またこれに対応して、銃床その他の部位を若干改修した。
翌13年(1938年)2月17日、「九七式車載重機関銃」として制定。
本銃は、改修九四式軽装甲車、九七式軽装甲車、九五式軽戦車以降の各型軽戦車、九七式中戦車以降の各型中戦車などに装載した。

本銃の機構はガス利用式。
ガス圧の調整は機能調整の主体をなすもので、これが強すぎると銃が振動し命中精度が悪くなるので、ガス圧は射撃に故障を生じない限り小さくするのが基本。
弾倉は20発入り箱弾倉で、1銃につき50個が準備されている。
眼鏡は平射・高射兼用の単眼直接照準眼鏡で、富岡光学が研究し、航空機関銃用オイジー照準眼鏡を改良して曇らない優秀な眼鏡である。
倍率1.5倍、視界は30度。

九七式車載重機関銃は、昭和12年度に15挺整備されたのが初めてで、13年度に1414挺、14年度に1434挺と続いた。

本銃の弾薬には普通実包、除銅実包、徹甲実包、曳光実包、焼夷実包および空砲がある。
これらの実包は昭和13年1月に九七式として仮制式となったが、昭和15年3月に九二式重機関銃との弾薬統制のため、九二式重機関銃の弾薬を無起縁薬莢に改め両者の弾薬を共通とし、名称を九二式に統一することになった。
徹甲実包は弾身の銃用鋼に黄銅被甲を被せた茂ので、重量は10.5g。
対して普通実包の弾身は硬鉛で、重量は13.2gと、やや重い。

車載機関銃は、発射間の照準線の保持が困難で、1回に発射する弾数を多くすると、終わりに近い弾は著しく散布する。
従って、発射弾数を少なくし、点射の間隔を短くして、命中精度を上げることが重要であった。
1点射の弾数は3~5発を標準とした。
九七式車載重機関銃の連続射撃常用限度は約300発で、手入れを行なわずに射撃を継続できる限度は約1500発である。
本銃の銃身交換は銃身結合方式で、九二式重機関銃に比べて銃身の分解が容易で交換しやすい。

(主要諸元)
口径 7.7mm
銃身長 719.8mm
銃全長 1168mm
銃重量 12.04kg
初速 740m/s
照尺 200~1500m
有効射程 1500m
発射速度 600発/分
給弾方式 箱弾倉
弾数 20発
弾量 13g

(参考:佐山二郎著 『日本陸軍の火砲 歩兵砲 対戦車砲 他』 光人社NF文庫 2011年発行)



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