1.生還者をお連れして・・・・


今回の旅の経緯は、3年前に遡る。
海軍の少年兵として、ミンダナオ島のダバオで終戦を迎えた藤井さんから一度ダバオへ連れて行ってもらえないかと頼まれた。
復員後一度も彼の地を訪れたことがなく、死ぬ前に一度、行ってみたいのだとおっしゃるのである。
「あんたは、よくフィリピンに行くようだから、その時に一緒に連れて行ってくれないか?」とのこと。
しかし、私が主に行くのはフィリピンでもルソン島なので、ついついそのままとなってしまった。

今年の3月になって、ふと、あれから3年も経ってしまったことに気がついた。
藤井さんも、もう83歳である。
このままでは、藤井さんの“夢”は叶わなくなってしまうかもしれない。
60数年ぶりにダバオの地を踏みたい・・・・それが藤井さんの夢・・・・
私がお供すれば叶うというのであれば、その夢を叶えてあげたい。
3年前から言われていたので、いい加減、思い切って実行に移さねば機会がなくなるかもしれない。
ミンダナオ島への旅行について連絡をしてみたら、藤井さんは大いに乗り気である。
「じゃぁ、私がガイド役を兼ねてお連れしてあげますよ!」
ということで・・・・急遽、実行に移すことにした。
善は急げ・・・・・で・・・・4月23日から行くことにして、飛行機の座席の予約だけを先に旅行社に頼む。
旅行の詳細は4月5日の「比島観音例大祭」でお会いした時に打合せすることにした。

【平成21年4月5日】

例大祭でお会いした時に「ダバオではどこへ行きたいですか?」と尋ねてたところ、「あんたの行きたい所でいい・・・」と言う。(笑)
ゲゲッ・・・そんなぁ〜
私もミンダナオ島は初めてである。
私はとにかくお連れするだけで・・・・・別にどこに行きたいという目的があるわけじゃない。
あれれ?行きたいって言っていたのは藤井さんの方でしょ?
「とにかく行ければそれでいい」と言う。
「そう言われましても・・・」
「山と川!」
「山と川?」
「そう、山と川が見られりゃいいんだ」
ありゃりゃ・・・こりゃ大変だ・・・・山と川だけを見にわざわざ行くの?(笑)
昔懐かしいダバオの山と川の景色だけが見られればいいらしい。
しかし、それだけ・・・というわけにもいくまい。
何か旅のコーディネイトもせねばなるまい。
結局、旅行のルートから何から何まで全て任されてしまった!(笑)
「ところで・・・パスポートの有効期間は大丈夫ですよね?」
「パスポート?・・・・そんなもの持ってないよ」
「へぇ?持ってない?」(唖然)
パスポートの有無を確認せずに飛行機を頼んじゃった!
急いでパスポートの申請をしてくれるよう頼む。
「ところで・・・・ご家族の方の承諾を得てますよね?」と尋ねると、「大丈夫」の一言。
本当だろうか?(笑)
少々心配である。
藤井さんには嫁いでいる娘さんがお二人いるというのだが、その娘さんの連絡先を教えてくれない。
「あのぉ〜娘さんにも事前に是非ご挨拶しておきたいので・・・」と言っても「そんなこと気にしなくていい」の一点張りである。
「連絡先を教えて下さいよ〜」と頼むと何も言わずニヤニヤしてるだけ。
どうも、その話になると・・・なぜか話を逸らすのである。(笑)

【平成21年4月12日】

藤井さんの娘さんから電話がかかってきた。
「お父さんが突然フィリピンに行くというので、冗談だと思っていたら本当らしくて驚きました」と言う。
えっ!やっぱり話していなかったんだ〜!
で・・・誰と行くのかと尋ねたら私の名前は教えてくれたが連絡先を教えてくれなかったという。
それで、父親の家に来て、電話の着信履歴を調べて、多分この電話番号だろうという事で電話をかけたとのこと。
いやぁ〜申し訳ない。
本来はこちらがご連絡をしなくてはならないのに・・・・
こちらも是非お話をせねばと気をもんでいたところである。

どうやら藤井さんは娘さんたちに反対されるのを恐れて出発直前まで話をしていなかったらしい。
やっぱりねぇ〜(笑)
完全な事後承諾になってしまったが、娘さんから改めて承諾を得て旅行の打ち合わせをする。
藤井さんは過去に脳梗塞を患い半身がちょっと不自由なので杖をついて歩く。
今でも薬を飲んでいるというので、その薬の数・・・朝何錠飲んで、昼何錠飲んで・・・と細かいことまでご説明を願う。
こういうこともキチンと把握しておかねば・・・・
それから娘さんから見た客観的な藤井さんの体調・・・・
食事の好き嫌い、1日のトイレに行く回数、普段の生活のリズム・・・・等々・・・・・
こちらとしても万全の態勢で臨みたいので、細かく伺う。

で・・・・「旅費はいくらなのでしょうか?」と尋ねられた。
実は、旅費がいくらになるのかは私も知らないのである。(笑)
いやぁ〜申し訳ないのだが・・・・
突然決めた旅行なので、フィリピンの現地旅行社から日本の旅行社に見積もりがまだ届かないのだ。
過去の経験から言うと、このくらいだと思うんですけど・・・・としか言えない。
考えてみれば、旅費がいくらかかるかわからない旅行なんて失礼な話である。
「死ぬ前一度行きたい」という目的なら安いから行く、高いから行かないということはないだろうと勝手に思っていた。
ご家族にしてみれば、いくらかかるのかは不安だろう。
私の、こういう経済観念がないところを、亡き母は心配していたのだが・・・
やっちゃったぁ〜(笑)
旅費に関しては、当然、私は自腹である。
藤井さんは藤井さん、私は私・・・と各自の負担。
出発前までに間に合わなければ、帰国後に支払ってくれればいいと旅行社から言われているからと話したが、娘さんからすれば、出発前に1円も支払わないでいいと言われて戸惑っているようだ。
いつも使っている旅行社なので支払は帰国後でもいいという特別待遇なのだと思う。
旅の計画も予算も“ノー天気”・・・・
逆にご家族に心配や迷惑をかけることになってしまったか?
とにかく娘さんとも直接話ができてよかった。
これでひと安心。

【平成21年4月22日】

今日、大阪から藤井さんが上京して、一緒に成田に泊まることになっている。
事前の打ち合わせで、私は私物をリュックに入れて背負い、藤井さんのスーツケースを持って旅をしようと考えていた。
しかし、娘さんの話では、藤井さんはスーツケースを持っていないがリュックは持っているので、それを父に背負わせるようにしますと言う。
リュックが2つではさすがに私も荷物運びができない。
藤井さんには杖だけを持たせて、その他は何も持たせないようにしようと思っている。
相手もリュックなら・・・じゃぁ、私の荷物をスーツケースに入れればいい。
藤井さんのリュックを私が背負えば同じことだ。
で・・・昨晩、スーツケースに荷物を入れて、ほとんど準備は完了した。

さて、あと1時間ほど経ったら駅へ行って特急に乗らねば・・・・というタイミングで、娘さんから電話が入った。
「父にリュックを背負わせようと思いましたが、キャスター付きのカバンを見つけたので、それを持って行くことにしました」と言う。
ゲゲッ!荷物変更?
こりゃ、大変だ!
スーツケースに入れた荷物を急いでリュックに詰め替えるが・・・・
だいたい、容量が違うんだから、リュックに入りきらない!(汗)
ありゃりゃ・・・・
大急ぎで持ち物を選別し直し、荷物の量を減らしてリュックに詰め込む。
急げ!急げ!電車に間に合わなくなる!
まさか、出発直前に、こういうことになろうとは・・・・(涙)
こういう移し替えの時の怖いのは、うっかり移し替えるのを忘れてしまうものが出るということ。
忘れ物をして藤井さんの面倒をみるどころではない・・・なんてことになったら大変だ。
パスポート・・・・大丈夫だよな?財布・・・・持ったよな?(笑)
なんとか、荷物もまとまり、リュックを背負って特急に飛び乗り東京へ・・・・
待ち合わせ時間前に無事に東京駅に到着する。

藤井さんは大阪に住んでおられるので、関西国際空港からマニラへ行くのが簡単なのだが・・・
藤井さんは関空を使ったことがない。
そりゃそうだ、今回の旅行のためにパスポートを作ったくらいなんだから・・・・
で・・・私も当然、関空から海外へ行ったことはない。
関空を知らない2人が早朝からウロウロというのもいかがなものか・・・・
成田なら私はよく知っているので、申し訳ないが東京まで来てもらうことで了承してもらう。
娘さんが同行して東京駅まで来て下さった。
お手数をおかけしたが、已むを得ない。
ホームで出迎え、挨拶もそこそこに、構内のレストランで食事をしながら旅行の再確認。
娘さんはここからまた大阪へとんぼ返り・・・・いやぁ〜本当に申し訳ない。
娘さんと別れた我々は上野駅まで向かう。
東京駅から成田エクスプレスで成田まで行けるが・・・・
東京駅の構内をかなり歩くことになる。
杖をついて人ごみの中を歩くのも大変だろう。
それより、上野へ移動した方が楽なんじゃないだろうか?
ということで・・・スカイライナーで成田へ行くことにした。
で・・・山手線に乗ろうとしたら・・・・
「切符を買わなくていいのかい?」と藤井さん。
「え?切符は持っていますよね?」
「ん?持ってないよ」
「え?だって・・・大阪からの切符はどうしました?」
「さっき、駅で機械の中に入れたけど・・・・」
「あれ?乗車券が出てきたでしょ?」
「ん・・・何か出てきたけど気持ち悪いから・・・置いてきた」
ありゃりゃぁ〜やっちゃったぁ〜。
新幹線口で乗車券をそのまま置いてきちゃったらしい。(笑)
うっかりしていた!
私がちゃんと確認しておけばよかった・・・・・

上野駅の改札で事情を説明して東京駅から上野駅までの料金を支払って構外へ・・・・
京成電鉄のスカイライナーに乗り京成成田駅へ・・・・
ホテルの無料送迎バスに乗ってもいいが、乗り降りが大変だろうから、ちょっと贅沢してタクシーでホテルに向かいチェックイン。
今晩はツインルームに一緒に泊まる。

何とか無事に成田までは来たぞ!(笑)
実際にお連れしてみると、ハラハラドキドキものである。
う〜ん・・・・この調子だと・・・・
明日からが大変だぞ!多分・・・・(笑)



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