九州南西海域における工作船事件の概要
平成13年12月22日、海上保安庁は防衛庁から九州南西海域における不審船情報を入手し、直ちに巡視船・航空機を急行させ同船を捕捉すべく追尾を開始しました。
同船は巡視船・航空機による度重なる停船命令を無視し、ジグザグ航行をするなどして逃走を続けたため、射撃警告の後、20ミリ機関砲による上空・海面への威嚇射撃及び威嚇のための船体射撃を行いました。
しかしながら、同船は、引き続き逃走し、巡視船に対し自動小銃、ロケットランチャーによる攻撃を行ったため、巡視船による正当防衛射撃を実施し、その後同船は自爆用爆発物によるものと思われる爆発を起こして沈没しました。
その際、巡視船「あまみ」乗船の海上保安官3名が、約7〜10日間の入院・加療を要する傷害を負いました。
海上保安庁では、事件発生後まもなく、第十管区海上保安本部(所在地:鹿児島県鹿児島市)及び鹿児島海上保安部に捜索本部を設置し、事件の全容解明に向けた捜査を開始しました。
その後、水深90メートルの海底から引き揚げた工作船のほか、合計1,032点に及ぶ証拠物を回収し、同船の乗組員10名を海上保安官に対する殺人未遂罪等の容疑で書類送検しました。(不起訴処分確定済み)
捜査の過程で、同船が北朝鮮の工作船であったこと、薬物の密輸入に関与していた疑いが濃いこと等が判明しました。
(パンフレットより)
「船の科学館」に屋外展示されています。 東京都品川区東八潮3−1 新交通「ゆりかもめ」新橋駅より(16分)船の科学館駅下車 (平成15年6月20日訪問) |
巡視船への攻撃、そして沈没
平成13年12月22日午後10時9分、工作船からの攻撃により巡視船「あまみ」「きりしま」「いなさ」が被弾しました。
このため、巡視船「あまみ」は正当防衛として、同船に対して射撃を実施、また、午後10時10分、巡視船「いなさ」も正当防衛として、同船に対して射撃を実施しました。
その後、午後10時13分、同船は自爆用爆発物によるものと思われる爆発を起こして水深90メートルの海底に沈没しました。
(パンフレットより)
船体後部の”観音扉” | |
二連装機銃(推定・ZPUー2) | |
工作船に収容されていた小型舟艇 | |
工作船の上部(操舵室の残骸) | |
工作船の上部 | |
後部”観音扉”の内部 |
工作船の驚くべき能力と偽装工作
工作船は、高速航行に適したV字型の船型を有し、全長約30メートル、幅約5メートルで、3枚羽根のプロペラ4基がエンジン4基と各々長いシャフトで連結された特殊構造の船舶です。
100トンクラスの一般的な漁船の約10倍の馬力で30ノット(時速約55キロメートル)以上の高速で航行することが可能と推定されます。
船尾には、観音開きの扉がありその中に小型舟艇が格納されていました。
また、船尾に「石浦」と記載のある工作船は、中国漁船に偽装していたと見られていましたが、日本漁船にも容易に偽装できる構造・仕組みであることが判明し、工作船は犯罪目的のために特別に建造されたものと思われます。
(パンフレットより)
訪問記
「船の科学館」の屋外の第1展示場で、引き揚げられた工作船が無料で公開されていました。
引き揚げられた武器や装備品などは「羊蹄丸」の3階にある第2展示場で無料で公開されていました。
午前中に見学しましたので、タイミングよくスムーズに見学できましたが、午後には50分待ちになるほど混んだそうです。
私が訪ねた6月20日に見学者が20万人を突破したようですが、工作船保存のための募金をお願いするなら、一人100円くらい見学料を取っても良かったんじゃない?
この公開展示は9月末までのようです。
主催は(財)海上保安協会、協力は海上保安庁・船の科学館・日本財団です。
(平成15年6月20日訪問)
第2展示場(羊蹄丸3階)の風景 | |
上陸用ゴムボート | |
各種武器 | |
水中スクーター |
海上保安庁の所管の国土交通大臣に“日本のサッチャー”と呼ばれた扇千景おうぎ・ちかげ氏という女傑がいた。
工作船がAK47(ソ連製突撃銃)やRPG7擲弾てきだん銃などを乱射してくるのを見るや、新造の小型高速艇「いなさ」「みずき」に応射を命じた。
これが全弾命中(ヴァルカン20ミリ砲弾は185発全弾命中)、工作船は炎上し、自爆自沈した。
普通の政治家だとここで止まってしまうのだが、日本のサッチャーは、「中国を刺激する」「東シナ海は大荒れだ」「予算がない」と渋る役人たちを叱咤して、証拠保全のため、この中国経済専管水域付近に沈んだ工作船のサルベージを命じ、さらに残骸の日本回航を命じたのである。
しかも扇千景氏は、驚いたことにこの工作船を国民に見せると断言した。
そこにもう一人、日本財団の曽野綾子会長(当時)という女傑が現れ、その費用を負担し、東京・お台場の「船の科学館」で展示されることになったのだ。
(参考:佐々淳行 著 『救国の八策』 2012年 第1刷 幻冬社)
(平成27年12月22日・追記)
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