一〇〇式擲弾器


 平成26年5月1日

オーストラリア陸軍戦車博物館(オーストラリア・メルボルン)


【一〇〇式擲弾器】

昭和14年2月、陸軍技術本部第1部は近接戦闘兵器研究会の研究方針に基づき、敵前至近の距離において手榴弾を簡易に投擲し得る投擲器の研究を開始した。
同年9月、千葉県の富津射場において第1回試験を行ない、おおむね所望の性能を得ることができた。
同年11月、陸軍歩兵学校の実用試験に供試した結果、実用価値があると認められた。
その後、部内において改修と試験を重ね、「試製一〇〇式擲弾器」と呼称して仮制式制定の上申をした。
昭和16年7月には試製のまま一部改修が行われ、翌17年2月には制式採用が決まらないまま、既製の7.7ミリ銃用のものを全部6.5ミリ銃用に改修。
またこの時から受坐が廃止されて、取付器右側に丸環と鎖が付いた。

本器の製造数は不明。
試作段階から製造されているので、相当数が実戦に投入されたと思われる。

本器は「九九式手榴弾(甲)」の投擲距離を増大することを目的とし、小銃に装着して近接戦闘に使用する野戦兵器である。
使用し得る小銃は、三八式歩兵銃、三八式騎銃、九九式小銃、九九式短小銃の4種がある。

本器は筒と取付器で構成されており、全備重量は約630グラム。
筒は円筒形で、手榴弾を装し、意図する方向へ発射するもので、側肉厚1ミリ、内径45.2ミリ、長さ100ミリ。
底部に弾丸(手榴弾)を保持する階段と、取付器にネジ付けするネジ部がある。
取付器とともに組み立てた全長は229ミリになる。
(以上の諸元は昭和16年、陸軍技術本部の報告書による)
取付器は銃口に取り付けるための装置と小銃弾丸の射出孔および筒をネジ付けする円筒形体からなり、この部分にガス孔を設けて、後部に受坐を付けている。
受坐とは筒の後部と銃床を連結している「つっかえ棒」の金具のことだが、後の改修で廃止されているので、もし受坐のある一〇〇式擲弾器が残っていれば、プロトタイプに近い珍品ということができる。
取付器には、口径7.7ミリ銃用と6.5ミリ銃用の2種類があり、取付器左側に「一〇〇式擲弾器七粍七銃用」または「六粍五銃用」と使用区分を刻記してある。

本器は着剣した小銃に対し筒を上方にし、取付器が銃身の延長線上になるように装着する。
手榴弾の安全栓を抜き、信管が前方を向くように静かに銃に装填し、銃の実包を発射すると、小銃弾は銃口から取付器の弾丸射出孔を通過して射出される。
その際、ガスの一部がガス孔より筒内に入り、その圧力により筒内の手榴弾を放射する仕組みである。
本器の取付器に開けられているガス漏孔を閉じ、射角をおおむね30度に保って発射する時は、手榴弾の射程は約110メートルで、これ以内の射距離を得るためには適宜、射角を減少する。
近距離に投擲する場合は、ガス漏孔を開いて初速を減少させることにより、手榴弾が弾着後にその余勢で転がることを防止する。
また、射角を30度以上に増加すると、信管の秒時の関係で空中で炸裂してしまい、地上の目標に対して効力を期待することはできない。
取付器は鍵形で、下方右側には射角と射距離が刻字してある。

本器は全体を黒色に錆染している。
運搬時には麻製の袋に収納し、袋を革帯(ベルト)通しで装着・携行する。
予備品は管、筒および止栓で、部隊予備品箱に収容されている。

(参考:佐山二郎 著 『日本陸軍の傑作兵器駄作兵器』 光人社NF文庫 2003年9月発行)



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