第５飛行師団

敬弔碑 （群馬県館林市・茂林寺境内） 昭和４８年１月ビルマ戦跡巡拝後建之 元第５飛行師団参謀長 陸軍航空兵大佐 正四位勲四等功四級　鈴木宗之　書 （平成１６年９月１２日）

碑文

感状

第５飛行師団・同配属部隊・同協力部隊

右者師団長陸軍中将田副登統率ノ下常ニ優勢ナル敵空軍に對シ寡兵克ク各種至難ナル任務ヲ完遂シ緬甸方面作戦遂行ノ為偉大ナル貢献ヲ為セリ
而シテ此ノ間　彼我航空戦力ノ懸隔愈々大ナラントスルヤ師団長以下鐵石ノ意志ヲ以テ部隊ニ灼熱ノ練磨ヲ加ヘ基地各種機関並ニ諸施設ノ強化對空戦闘ノ準備等ニ有ユル創意工夫ヲ凝シ精魂ヲ盡シテ萬全ノ準備ヲ整フ
乃チ空地一如ノ練成全ク成リ進攻ニ邀撃ニ将又對空射撃ニ毎戦赫々タル戦果ヲ収メタリ
是實ニ師団長ノ俊敏卓抜ナル統帥ノ下各級指揮官常ニ陣頭指揮ニ徹シ将兵斉シク必勝ノ信念ヲ堅持シ烈々タル気魄ヲ以テ克ク酷烈ナル作戦ノ要請ニ應ヘ其ノ真價ヲ遺憾ナク発揮セルモノニシテ武功抜群ト認ム
仍テ茲ニ感状ヲ授與シ之ヲ全軍ニ布告ス

昭和２０年１月１日
南方軍総司令官　伯爵　寺内寿一

��墳（墓誌銘）

此の墳（つか）名づけて��墳たかしづかという
��は第５飛行師団の別名である
大東亜戦争中ビルマに於て奮戦した��部隊の感状を碑面に刻み碑下に戦史叢書ビルマ各飛行場の土石芝等を納め更に観音像を安置しその下に遺骨遺品戦没者名簿を納め以て英霊鎮魂の処となす

昭和４８年１１月２４日
三笠宮崇仁親王殿下ご臨席のもとに除幕式を行う

陸軍航空ビルマ会建之

茂林寺 （群馬県館林市堀工町） （平成１６年９月１２日）

【第５飛行集団】

飛行集団はのちの飛行師団の前身であり、戦・爆・偵の各機種を合わせ持つ大集団である。
しかし、作戦の都合上、一つの飛行戦隊が、ある時には第２飛行集団に、ある時は第３飛行集団の下に入るなど、時々その構成内容が変わっている。
これは自由に移動できる飛行機の強みである。

太平洋戦争の勃発時、フィリピン戦の第５飛行集団、マレー・シンガポール戦の第３飛行集団の二つが南方進出航空兵力の主力となった。

第５飛行集団長・小畑英良ひでよし中将（陸士２３期）は騎兵出身で、４年前に飛行畑に転じた将軍である。
大阪出身で５１歳。
戦闘機のメッカ、明野あけの飛行学校長から移った彼は、２年後に地上軍の第３１軍司令官としてグアム島で悲壮な戦死を遂げる。

フィリピン戦時の第５飛行集団

集団長：小畑英良中将
（第４飛行団）：河原利明少将
　　　飛行第５０戦隊（九七戦）
　　　飛行第８戦隊（九九双軽・九七司）
　　　飛行第14戦隊（九七重）
（第１０飛行団）：広田豊少将
　　　飛行第７７戦隊（九七戦）
　　　飛行第３１戦隊（九七軽）
　　　飛行第６２戦隊（九七重）
（第１０独立飛行隊）
　　　各種偵察：３個中隊
　　　飛行第２４戦隊（九七戦）
　　　飛行第１６戦隊（九七軽）
第１１輸送機中隊
その他、地上部隊

〈機種内容〉（第１０飛行団は初め第３飛行集団所属だったため数には含まず）
戦闘機＝７２機
軽爆撃機＝６３機
重爆撃機＝１８機
偵察機＝２７機
輸送機＝９機
合計１８９機

第５飛行集団は昭和１５年１２月に編成された。
第４、第１０の二つの飛行団を持つが、一つの飛行団が戦、軽、重爆の混成部隊だった。
その代わり３種類の偵察機中隊３個からなる第１０独立飛行隊を付けられていた。
マレー・シンガポール戦担当の第３飛行集団よりフィリピン戦担当の第５飛行集団のほうが兵力が少ないのは、海軍機が主として活躍してくれる予定だったからである。

フィリピン攻略戦

昭和１７年（１９４２年）１月２日、マニラが陥落した。
しかし、米軍はバターン半島に立て籠もり、必死に抵抗した。
そのバターン半島の先端には、マニラ湾の北に突き出したコレヒドール島要塞がある。
ここにマッカーサー大将以下、１万５千名が山の中のトンネルに立て籠もっていた。
困ったことに、この一番大切な時に第５飛行集団は南方軍総司令官・寺内寿一元帥から「フィリピン戦はもぅ勝負がついた。すぐ次のビルマ進攻のためタイ国へ戻ってこい！」という命令を受けたのである。
飛行機が少ないから引く手あまたなのである。
小畑中将は自己の兵力を率いて昭和１７年１月１４日、北上してタイ国のドムアン飛行場（現・バンコク国際空港）へ戻ってしまう。
つまり、フィリピンには日本陸軍の飛行機が無くなってしまうので、南方軍では、ほんの一握りの航空兵力をフィリピンに残し、それを本間雅晴中将の指揮下にいれてやった。
いわゆる第１４軍飛行隊で、偵察機が多く、これによりコレヒドール島に対する砲撃の着弾観測や敵前上陸の援護をさせようというのである。

（コレヒドール攻略）
第１４軍飛行隊（第１０独立飛行隊長が兼任）
　　　九九式軍偵察機＝９機
　　　九八式直協機＝１２機
　　　九七式司偵機＝９機
飛行第１６戦隊
　　　九七式軽爆撃機＝２７機
飛行第５０戦隊の３分の１
　　　九七式戦闘機＝１２機
飛行場大隊＝２個
野戦高射砲大隊＝１個（八八式７．５センチ高射砲）
野戦気象大隊＝１個
第１航空通信連隊の一部

九八式直協機がいくら砲兵に協力しても、コレヒドールの敵の砲火は一向に衰えを見せず、３ヵ月かかってもまだおとせない。
南方軍は第二次コレヒドール島攻撃のため３つの爆撃部隊をビルマから呼び戻した。

第３飛行集団・飛行第６０戦隊＝九七式重爆（３５機）
第５飛行集団・飛行第６２戦隊＝九七式重爆（２５機）
第５飛行集団・飛行第１６戦隊＝九七式軽爆（３２機）

こうなると応援機のほうが３倍も多いのだから、第１４軍飛行隊長では荷が重すぎる。
昭和１７年４月２日、第２２飛行団が在フィリピンの陸軍航空隊で編成され、コレヒドール島攻略に加わることになった。
第２２飛行団長は三上喜一少将は陸士２７期、のち、終戦時に翼を失い、ルソン島のバレテ峠で第４飛行団長として地上戦を指揮することになる。

第５飛行集団は、開戦時から昭和１７年３月１０日までに４７機を失い、他に２４機が地上で炎上、修理可能な損害を受けたものは１８機、計７１機の損失を出している。
以後、第５飛行集団はビルマへ応援に駆け付けることとなる。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行）

（平成３１年１月５日　追記）

マグウエ航空殲滅戦

昭和１７年３月２１日、ラングーンから退却した英空軍を殲滅するため、第５飛行集団は敵基地マグウエに大空襲をかけた。
英空軍は、第５飛行集団に対して反撃を企図してので、機先を制して英空軍を一網打尽にしてしまおうという作戦である。
ラングーンやその北のミンガラドンを離陸した第５飛行集団は、合計１５１機。

ビルマでは隼よりも、まだ九七戦が多かった。
そのため敵の新鋭機に散々ひっかきまわされ、日本側は５機を失い、他に９機が傷を負った。
翌２２日も空襲を反復。
英軍機は北西のアキャブへ逃走、米義勇空軍もたまりかね、本来のホームグランドである中国西部へ退却した。

翌３月２３日、今度はアキャブ飛行場を攻撃する。
ブリュスター・バッファローやホーカーハリケーン戦闘機の他、ロッキード社のハドソン双発爆撃機やライサンダー直協機がいることが、司偵の偵察で判明していたからである。
英軍機は地上で損傷を受けたので、稼働機はインドのチッタゴン（現・パキスタン領）へ退却した。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行）

（令和２年３月３０日　追記）

昭和１７年（１９４２年）７月、南方進攻で占領した全域を担当する航空部隊として、南方軍の下に第３航空軍ができ、この下で第５飛行集団が第５飛行師団に名称を変更してビルマ方面を担当することになった。

昭和１８年（１９４３年）３月１１日、第５飛行師団は第３航空軍に「重爆撃機の制式を根本的に改変し、速急に第一線に交付せられたき件」と題する上申を行った。
これは第７飛行団長・田中友道少将が第５飛行師団に行った意見具申によるものであった。
まず敵の重爆Ｂ−２４が援護なしに味方戦闘機の邀撃に耐えて進攻しているのに、味方の重爆が攻撃する場合は、多数の援護戦闘機をつけても、よく落とされる。
したがって、現用または同じ思想で開発中の重爆では駄目で、装甲、防火、武装を重視したものが必要であり、これらの要素と長大な後続力を持つ超重爆を開発すべきであるという趣旨であった。
だが、当座はＢ−２４のコピーでもいいから至急作って第一線に送ってくれ、と要望しており、この上申は航空本部まで達している。

（参考：伊澤保穂著『陸軍重爆隊』）

（平成２１年２月２２日追記）

チンスキヤ爆撃

中国は日本と戦う背後、つまり西方から莫大な軍需品を輸入していた。
イギリスやアメリカからの軍需品はまず海路インドに陸揚げされ、そこから空輸で中国の昆明へ運ばれる。
昭和１７年７月１日からは毎月７０００トンに増加した。
インド北部のアッサム飛行場が完成した後、輸送量は月額１万トンにも達した。
使用されたのはCー４７型双発輸送機ダコタで、これにはイギリスの２個中隊も加わり、１０分ごとに１機が離陸するという大規模な空輸だった。
昭和１７年１０月の９日間に１９５機もが離陸したほどである。

第５飛行師団長・小畑中将は司偵の偵察の結果、Cー４７が途中、ビルマ北部のチンスキヤに着陸、燃料を補給することに気付いた。
そこで彼は３回にわたり、チンスキヤ飛行場を爆撃することにする。

昭和１７年１０月２５日の第１回目、重爆はビルマのメイクテーラから、軽爆はシュエイボからそれぞれ離陸し、高度２０００メートルで合流、西進した。
奇襲は成功したが、この日、米英軍の対空砲火は著しく、我が方の被弾機も決して少なかった。
空中戦が展開されたため、翌２６日は戦闘機だけで空襲し、２８日には再度、爆撃機が出た。
この３回の攻撃で敵の輸送量は半減した。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行）

（令和２年３月３１日　追記）

昭和１７年（１９４２年）１２月中旬、第５飛行師団は、カルカッタとレド方面への夜間攻撃をかけることとし、重爆隊に命令した。
飛行第１４戦隊は７機で１２月１８日にトングー南に進出、飛行第９８戦隊も同日に第１中隊がタボイ、第２中隊がレグ、第３中隊がミンガラドンに進出した。
この夜、両戦隊ともに中隊長が司令部偵察機（司偵）で下見にでかけたが、翌日は天候が悪く攻撃は中止となった。

１２月２０日２１時３０分、飛行第１４戦隊の５機がトングーを離陸。
井戸田大佐同乗の第２中隊長・日高靖喜大尉（陸士５０期）の率いる３機は、カルカッタの北端にあるダムダム飛行場を爆撃して７箇所の炎上を視認。
第３中隊長・宮嶋満大尉（陸士５０期）率いる２機は、カルカッタの南にあるバッシバッシ埠頭を爆撃。
ともに翌日の午前４時頃レグに着陸した。
この日、飛行第９８戦隊もカルカッタの石油タンクを爆撃し全機帰還。

翌日、飛行第１４戦隊第１中隊長・小川順造大尉（陸士４９期）は、飛行第８１戦隊の栗山中尉（陸士５４期）の司偵に同乗してカルカッタに偵察に向かい未帰還となる。
英軍側に撃墜の記録なく、未帰還の原因は不明。

１２月２３日午前０時、飛行第１４戦隊は、第１中隊の蔵野輝雄中尉（陸士５２期）機に戦隊付の石川真保少佐（陸士４６期）が同乗し、３機でカルカッタに向かいカルカッタの埠頭倉庫を爆撃。
この時、敵の邀撃を受け、高橋賢治中尉（陸士５３期）機はエンジンに被弾してアキャブに胴体着陸、鈴木章中尉（陸士５４期）機も燃料タンクに被弾してラングーンとペグー中間の水田に不時着した。

２４日夜、飛行第９８戦隊が埠頭を爆撃したが、近藤中尉（陸士５０期）が敵の邀撃により撃墜される。
同夜、飛行第１４戦隊は第２中隊がキング・ジョージ・ドックを爆撃、第３中隊が貯油庫を爆撃して全機無事に帰還した。
ケチルに帰還した飛行第１４戦隊にはラバウルへの転進命令が来ており、これ以降、ビルマ方面の重爆隊は飛行第９８戦隊だけとなった。

１２月２８日早朝、飛行第９８戦隊は、トングー南からカルカッタの埠頭東側を爆撃して全機無事帰還。

昭和１８年（１９４３年）１月、第５飛行師団は飛行第９８戦隊に対し、カルカッタ夜間攻撃隊として重爆３機を師団直轄に派遣するよう命じる。
１月１５日２１時３０分、田北次郎中尉（陸士５３期）機、田中清治中尉（陸士５３期）機、石戸勇治少尉（少尉候補者２１期）機の３機がトングーを出発しカルカッタへ向ったが、ダムダム飛行場から飛び立った敵の夜間戦闘機「ボーファイター」により、わずか４分間で全機が撃墜された。

一挙に２１名を失った飛行第９８戦隊は、翌日、さらに３機を派遣せよとの飛行第５師団の命令を受ける。
今回の「特別攻撃隊」として、中隊長３名が参加することとなる。
１月１７日、原忠夫大尉（陸士５１期）機、長田利夫大尉（陸士５１期）機、田中金治大尉（陸士５１期）機の３機がタボイに前進。
１月１９日２０時、さらにアキャブに進出し、敵戦闘機と交戦しながらバッジバッジの燃料タンク群を爆撃し大火災を起こさせ、全機帰還した。

この第二撃で第５飛行師団は、カルカッタ夜間爆撃の「特別攻撃」を中止した。

（参考：伊澤保穂　著　『日本陸軍重爆隊』　１９８２年　現代史出版会・発行　徳間書店・発売）

（平成２６年５月９日　追記）

【田副たぞえ登中将】

昭和１８年５月、第５飛行師団・小畑英良中将は第３航空軍司令官・菅原道大中将の後任としてシンガポールに異動した。
小畑中将の後任としてラングーンに到着したのは、田副登中将（陸士２６期）である。
九州・熊本の出身、士官学校の成績も優秀で、フランス留学の経験もある。
陸軍大学卒業後、航空本部の仕事をしてきた。

着任後、雨季もあけ田副中将がビルマにようやく慣れかけた昭和１９年１月の兵力は稼働機１４７機であった。
このほか多少の修理をすれば飛べるもの１９機、不良機３０機、計１９６機を持っていた。
パイロットは将校７１名、下士官兵１２４名である。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行）

（令和２年３月３１日　追記）

ビルマには第５飛行師団がいたが、飛行場はビルマ全土で１０５ヶ所もあるのに、所有する戦闘機は約１００機にすぎなかった。
反対に敵のインド東部航空軍は４８０機を持ち、ほかに爆撃機２００機を動員して、ビルマ各地を爆撃していた。
ことに昭和１９年に入って、敵は航続力の長いビューファイターとライトニングの長距離戦闘機を配備したため、活動範囲が広くなり、ビルマ奥地の制空権は完全に敵のものとなっていた。

（参考：黒岩正幸　著　『インパール兵隊戦記』　光人社NF文庫　１９９９年２月発行）

（平成２９年５月２日　追記）

第５飛行師団「高」の師団長、田副たぞえ登中将が、近代装備の敵の攻防力を重視し、航空兵力の大半をニューギニア海域に取られて弱体化している現在、作戦（インパール作戦）に協力できないと説いて、第１５軍（牟田口廉也中将）の自重を促した。
しかし、第１５軍は、密林の中の隠密行動に飛行機の援助はいらないと言って、近代戦における空陸一体作戦の重要性を無視し、田福中将の意見を斥けている。

参考文献：塩坪辰実著『ビルマ戦線とインパール〜一小隊長の戦闘手記〜』

（平成２１年５月９日追記）

昭和１９年（１９４４年）、インパールからインドへの進攻を目指す作戦が行われることになった。
そのため、すでに第一線が接しているアキャブ正面、インパール正面、北の中国国境正面、そして軽視したために致命的となるビルマ北部の英空挺隊降下地区の４正面を同時に担当することになった第５飛行師団の各飛行部隊は、急速に消耗していく。

３月９日に、ビルマ北部のカーサ南方に敵がグライダーで降下したことが報じられた。
さらに１０日の偵察でも３箇所に飛行場が造られ、２箇所には戦闘機のいることが確認された。
第５飛行師団ではインパール作戦を中止しても、このビルマにすでに侵入した敵を撃滅すべきである、と地上軍のビルマ方面軍と第１５軍に申し入れた。
しかし、前年に、もっと小規模な敵が侵入したときに何とか撃退できたことが頭にあったのか、方面軍と第１５軍はこの申し入れを聞こうとはしなかった。

第５飛行師団は、インパール作戦協力の片手間にこれを攻撃するしかなかった。
このため、５月には、ビルマ北部の状態は容易ならぬという程度を超えて、かなり悪化した。

（参考：伊澤保穂　著　『日本陸軍重爆隊』　１９８２年　現代史出版会・発行　徳間書店・発売）

（平成２６年５月１８日　追記）

航空作戦の終焉

昭和２０年１月６日から第５飛行師団長は、服部武士中将が田副中将に代わってラングーンに着任した。
彼は田副中将より一期下の陸士２７期（大正４年卒業）で爆撃機の専攻。
今まで南方軍航空技術部長や千葉県下志津の飛行学校（偵察）校長など後方任務にばかりついてきた。

彼の到着を待ちかねたように英軍は彼の就任から３日後、アキャブ港に上陸してきた。
１月９日、ラングーン付近のミンガラドン（現・ラングーン国際空港）から飛行第５０戦隊、飛行第６４戦隊の隼戦闘機が敵船団の攻撃に出動したが、前者は爆撃機の代わりに３０キロ爆弾各２発を抱いていた。
飛行第６４戦隊がスピットファイア―戦闘機と空中戦を交えているうち、飛行第５０戦隊が低空から投弾したが、ほとんど戦果はない。
１月１２日も攻撃は繰り返された。
２月になるとビルマ方面の戦況は絶望的となった。
２月２４日、英第４軍団は第２５５戦車旅団を投入し、メイクテーラの奪回を図ってきた。
我が第３３師団（弓兵団）、第５３師団（安兵団）の陣地は各所で寸断され、兵は敗走した。
防戦に飛んだ飛行第６４戦隊の隼１４機は車輛２台を炎上させ、４８台を撃破したが、とても敵の進撃を食い止めることはできなかった。
メイクテーラ飛行場を死守した第５２飛行場大隊は悲壮だった。
２月２７日、捕獲した４０ミリ・ボーフォス高射機関砲や八八式７．５センチ野戦高射砲で飛行場に突入してきた敵戦車をゼロ距離射撃したが、大隊長（少佐）は戦況を司令部に打電したのち、児童拳銃で頭を撃ち自決した。

それに比べればパイロットは恵まれていた。
３月３日、危機を感じた彼らは空路カンボジアのプノンペンに退却できたからである。
第１航空通信連隊や飛行場大隊の一部も輸送機やトラック、泰緬鉄道でタイ国への逃亡に成功する。
５月、第５飛行師団は最後の力を振り絞って九九式双発軽爆少数機で反撃したが、これが５年間に及ぶビルマ航空戦の終焉となった。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行

（令和２年３月３１日　追記）

終戦後

昭和２０年８月１５日の終戦後、フランス軍が仏印のサイゴン（現・ホーチミン市）に進駐してきた。
しかし現地人たちは独立の志に燃え、フランス軍に対し小さな反乱を繰り返した。
そこでサイゴン市の治安維持のため、ビルマから後退してきた第５飛行師団の第７航空地区司令官・尾上一郎少佐は、インスタント編成の７００名の混成部隊で治安維持にあたった。
この中には飛行第６４戦隊（加藤隼戦闘隊）のパイロットや整備員も含まれていた。
現地人たちには親日のムードがあり、同時に反フランスの感情があったので、第５飛行師団の残部は、敗戦後８ヵ月の昭和２１年４月まで、サイゴンの警察的任務についていたという。

（参考：木俣滋郎　著　『陸軍航空隊全史』　朝日ソノラマ　文庫版航空戦史シリーズ９０　１９９４年７月　第６刷発行

（令和２年３月３１日　追記）

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